「ユズっ」


「何よ、ヒナタ」


「今から競争しようぜ」


「やだよ、ヒナタ早いんだもんっ」



ぷっと頬を膨らませる、小さい頃のあたしに。



小さい頃の日向が、楽しそうに笑う。



「よーい、どんっ」


「あ!ちょっと!待ってようっ」




あたしのずっとずっと先を、悠々と走っていく。



気持ち良さそうに、静かに爽やかに。



…透明な風だ、と思った。







ねぇ日向、知ってる…?



…あたし、あの頃からずっとずっと日向だけを見ていたんだよ。



今までだけじゃない。

これからもずっと…