未だに頭の奥のほうでズキズキと音が鳴っている。
細い細い針で後頭部をちくちくと刺されているようだ。

アリスは【深緑の薔薇】一味、そしてハニーとは別行動をとることになった。


“いいか、中庭におびき出せよ。”


ザックはそう言った。

リル・イニーネは物静かな人間だが、仕事はこなす人間だ。
故に城内の人間の顔はおそらく全員把握しているという。

つまりアリスが城内に入り、リル・イニーネの視界に入れば必ず怪しまれるということだ。


もしそこで大声を上げ、兵に命を下し、アリスに危険が迫ったとする。
その時は命がけで守るとハニーが言ってくれた。

【深緑の薔薇】一味もその騒ぎに感けて姫君をさらい、計画は遂行すると言っていた。


兎に角アリスの成すべきことは一つ。
リル・イニーネを中庭におびき出すことだけだ。



アリスは緊張する胸を抑えながらも、裏口から城内に進入。
見張りの兵は何人もいたがどうにか掻い潜って入ることができた。

中に入ってしまえば意外と緊張は溶けた。

メイド服を着ているせいか誰も疑いの目を向けることは無かった。
周りの女中も、大臣らしき髭を生やした人間も、皆アリスを部外者だとは思わない。


すると突然大柄な女性に首根っこをを摑まれた。
アリスは驚きで声も出せずにいた。


「おい!あんたメイドじゃないのかい!?」


「はっ!?ああ、はあ・・・。」


「ぼさっとしてないでとっとと式典会場に行って来な!
もう聖誕祭は始まるってのに何やってんだい!」


「はっ、はいっ!!!」


アリスは急いで式典会場へと向かった。
会場がどこかもわからぬまま。