城内がざわついている。
城の外も松明の光で溢れていた。

恐怖がアリスを襲う。


「つまり、キングダムAは“宵の勢力”ってこと?」


ハニーは内ポケットから懐中時計を出し、それを眺めていた。


「でしょうね。
クイーン・ハートネスが既に宵の勢力に取り込まれていたことは見て取れましたが、まさかこんなにも早く貴方を捕まえようとするとは・・・。」


アリスの脳裏にクイーンの意地悪そうな顔が浮かんだ。
あの時感じた不信感は強ち間違いでは無かったようだった。

ハニーの服の裾を掴み、アリスは問いかけた。


「あんなに兵隊がいるのに、逃げられる?」


ハニーは跪き、アリスの手を取ってその手の甲を額に当てた。


「ご心配をなさらずに。私にお任せ下さい。
必ずやアリス嬢、貴方を無事に英知の塔まで運びます。」


月がハニーを照らした。
真っ直ぐな目でアリスを見つめる眼は、決して裏切ることは無いと語っている。

アリスはそれを見て微笑んだ。


「先ずはここ、キングダムAを脱出しましょう。
それから英知の塔を目指し、逸早く宝珠を享受する。

奴らは貴方ではなく宝珠を授かったアリス嬢を狙っています。

しかし享受をすれば一先ずは安心できましょう。
宝珠を授かった貴方を殺すことはできませんからね。

それまでは追っ手も執拗に追いかけて来るとは思いますが、それまでの辛抱です。」


アリスは強く頷いた。


「よろしい。では、行きましょう。」


そうしてハニーの手を取ったのだった。