―――――――…
霜枯れの時期。山々に囲まれた田舎は、雪によって真っ白に化粧されていた。
「寒ぃぃぃい」
「すべるなよ」
今日は久々の学校。冬休みが終わって、あとは卒業だけが待っていた。
「ねぇ京。綾たち卒業できるかな?」
「何サラっと怖いこと言っちょるか!」
「だぁってさぁ〜!」
「だいたい義務教育だから卒業できるが」
「あ、そっか」
すべる地面にハシャギながら学校に着き教室に入ると、すでに登校していた陽子と陸。
「あ。おはよー綾、京」
「はよ」
「「おはよー」」
陽子と陸に挨拶を返して席に着く。
「今日さー……」
普通に会話を始める京たち。綾はその様子を黙って眺めた。
陽子と陸には綾の病気のことは言わないつもり……だった。
迷った末、決心した。綾が病気で、ママがいないこと。どっちも隠さず伝えた。
今度は泣かなかった。京が隣にいてくれたから。
陽子も陸も、黙って聞いてくれた。何も言わずジッと綾の言葉を聞いて、どう思ったかなんて分からないけど、全てを話し終えた時、微笑んでくれた。
それだけで、嬉しかった。それだけで、充分だった。
京と陽子と陸。それ以外のクラスメートには激しい運動を続けると軽い発作を起こすと、嘘をついた。
「さすがにキツいもん……」
「綾? 何か言ったかや?」
「ん? 何でもないよっ」
陽子の問いにニコッと笑みを見せる。表情とは裏腹に、心の中では「あの子は病気」と見られるのは嫌だと思っていた。
いつ死ぬか分からない綾を、普通の目で見るのは不可能だと思った。だから軽い発作なんて嘘をついたんだ。