「呆けるなよ」

 何を言い出すのだ、この人は。

 そんな思いで頭の中がグルグルとしていた私を見下ろし続け、近宮先輩は続ける。

「自殺したいってことは、君、つまりは姫森美穂(ひめもりみほ)という存在を完全にこの世界から消してしまいたいんだろう?」

 近宮先輩の瞳は氷のように冷たく、こちらの肌に冷気が刺さってくるかのようだった。

「ところが残念ながら、先日君がやった方法では、君という存在がまだ世界に残る。

 君の覚悟は、そんな中途半端な自殺で満たされるのか?

 やるなら、完璧にやれと私は言いたい。

 完璧でない自殺など、それこそ無意味で無価値だ」