「あ、来た来た!」


 ベランダから外を覗き込んで叫ぶ唯衣。

 でっかい荷物とオレを抱えて玄関先へ向かおうとした唯衣に、


「カエルは俺が持ってやる」


 流川は、唯衣の手からオレを取り上げて肩にかけた。


 正直、オレはそのほうが助かる。

 ほぼ同身長の唯衣とオレだから、

 唯衣に抱えられると、オレの足は地面に引きずられてしまうのだ。


 すでに、足先は汚かったりして。

 クリーニングにだそうかな、なんて、たま~に唯衣が言っている。


 流川はオレを持つとすぐに肩にのせるから、オレの足が地面についてしまう心配もない。

 抱えて持たれたとしても、背の高い流川がオレを引きずるようなこともない。


 よって、俺は流川の肩のほうが落ち着くというわけ。


 まあ、抱きしめられるのは、唯衣のほうが嬉しいけども。


 
「おはよ」


 外に出ると、見覚えのある車。

 あ、この車、オレをパチンコ屋から連れ出してくれたオニイチャン…祐二の車じゃん。

 ということは…


「あなたがエスパー流川直人!!」


 その彼女であるオネエチャン…麻紀の声。


 どうやらこの2人と、計4人での旅行らしい。


 フルネームで呼ばれることに少々引き気味の流川と唯衣、そしてオレを乗せた祐二の車は、勢いよく出発した。


 道中、相変わらずぎゃあぎゃあウルサイ麻紀と祐二のコントみたいな喧嘩。

 しばらくすると爆睡してしまったその2人。


 唯衣はオレを祐二の傾き防止のためにストッパーに使って、

 流川の肩もみを始めた。


 目の前に祐二のケツ。

 勘弁してくれ。

 せめて唯衣側に顔をむけてほしかった…。