パーシヴァルは、ようやくの終わりに肩の力を抜いた。結界の範囲を絞り、神霊を外したラクベスと、元の姿を取り戻した石動(いするぎ)に歩み寄る。

 石動は力を使い果たしたのか、息を切らせて崩れるように両膝を突いた。それでも、その目だけはラクベスを鋭く睨みつけている。

「よくも、邪魔をしたな」

 声を震わせ頭(こうべ)を垂れる。

「この苦しみを──誰が、解ってたまるものか」

 低く絞り出した言葉は、室田の心にもずしりと重たく沈み込む。

 一体、どんな悲惨なことがこの男にあったのだろうか。展開される闘いに目を奪われ、パーシヴァルに尋ねる機会を逸していた。

「あなたが受けた哀しみは計り知れません。それでも、私はあなたを止めます」

 吐き捨てるようにつぶやく石動に向けられるラクベスの瞳は、決して優しいものではなかった。