タイヤを滑らせる音がして、車が止まる。

放心状態で乗せられていた私は母親に腕を引かれながら助手席を降りた。


「じゃあ涼子さん。明日准一にマキちゃん迎えに行かせるから、荷物準備しておいてね?」


帰り際に聞こえたお母さんと修哉さんの会話。

頭から離れない。


本当に一緒に暮らすことになっちゃうんだ。


「ほら、マキちゃん。どうしたの?准一君と一緒はそんなに嫌?」

「…微妙」


私はそっけない返事をしてフラフラとした足取りでマンションへと足を踏み入れた。

微妙ってなによ、と追いかけてくる。


「マキちゃん危ないわよ!ちゃんと歩いて」


コツコツとヒールの靴を鳴らしながら私の背中を擦る母の手。

誰のせいでこんな風になってると思ってるのか。

明日でこのマンションともお別れ…

そう思うとジーンと胸に刺さるものがあり目頭が熱くなった。


やっと帰って来た自分の部屋。

やっぱり落ち着くところはここしかない。

でも…

明日からはここへは戻って来れない。