「ねぇ、陽ー?」


「なぁに、愛美ちゃん?」


「ツッキー待ってるよ?」


「ふーん」







放課後の教室。担任の解散という声から30分。その少し前から窓の向こうに見えていた颯汰くんの姿はずっとそのままだ。







「行かないの?」


「愛美が行けば?」


「ツッキー可哀想」


「、、、 私、一緒に帰りたくないし」


「なんで?」









颯汰くんは、両親の離婚のことしか知らないだろうし。
祖母のスナックなんか見たらどう思われるか、、。

それに、一緒に帰る意味もない。







「実はお母さんの」


「あ!!」


「っ、なに」


「ダメ!見ちゃ!」


「何が」









視界をさえぎる愛美を避けながら窓を覗こうとした。

ちょこっと見えた校門のところ。









「いやぁ、なんじゃろねぇ。これ」




愛美が気を使ったのか、変な方言をつかう。






「ありゃ、幻じゃよ。なぁ?」


「ほらね。颯汰くんも、、、一緒だよ。」


「わかんないよ?ほら!!うちの制服じゃないし」









この学校ではない制服を着た女の子が、校門にいる颯汰くんに抱きついていた。

中々離れないそれに、少しだけ胸を痛めた。




颯汰くんも、男の子なんだ。って。

男の人なんだって。










「私、裏門から帰る」


「え、陽!ツッキーは?!」


「知らないよ。あんな人」


「よ、、ぅ」






なんで、また、


泣いちゃってんだろう。







お父さんの浮気で離婚した両親。

お母さんの新しい恋人は何股もする人で、やっと優しい人に出会えたと思ったら


夜逃げした。






男の人関係で、いいことなんか




ひとつもない。








祖母は私を憐れんでいつも言う

『男の好きは信用ならん。不幸になりなくなければ、そういう男は避けるべきだ』


それに、素直に従おうと思う。