伊藤さんから聞いた話はある意味衝撃的だった。
オレには未だ感じたことのない感覚すぎて。
初恋を知らないという言葉が改めてストンと頭に落ちてきた。
ほんとにその通りだ。

『結人ー、聞いてんのか?』
『ん?あー』
『全然聞いてねーじゃんか!』
『大輔はさ』
『ん?』
『橋本さんのどこが好きなの?』
『はあああああ!?』
『うわ』

大輔の大声にぼんやりしていた頭が一気に現実に戻されびっくりする。

『ななななんで、それを』
『いやバレバレだから』
『ぐ…そ、そうか』
『で?』
『……』
『答えろよ!』
『はぁ…わーったよ』

話を聞いてみると心底大輔に幻滅した。
というのも、学校近くを歩いていたら前から体操着の橋本さんが走ってきたらしい。
友達と話ながら走っていた橋本さんを見たとき稲妻が走ったんだとか。
ピッタリサイズの体操着姿の橋本さんのおっぱいが、ぶるんぶるんとこれでもかと揺れていたのだ。

その日はもう頭のなかはおっぱいでいっぱいだった。
夢にまでおっぱいが出てきたらしい。
そんなある日の帰りに電車の中で制服姿の橋本さんに気がついた。
それから橋本さんのことが気になってたまらなくなったんだって。

『クソみたいな理由だな』
『仕方がないだろ!入りはどうあれ気になるもんは気になるんだから!』
『そ、そっか』

聞かなきゃ良かった。
また初恋がよく分からなくなった。