社内で秘書課の女子社員と社食で一悶着あったと第二秘書の有坂から報告を受け、いてもたってもいられずに、受付へと駆けつけた。
いつもなら、仕事なら、もっとスマートに対応できる。
しかし、愛してやまない彼女の事に関しては別だ。
手遅れになってはならない。
僕は彼女が欲しくてたまらないのだから。

最初は、新しい受付の子はどうだろうと思って見ていた。
その子が庶務課でよく働いてくれてた清水さんだと気づいた。
一年前から気になっていた彼女。
普段はあまり表情が表にでないタイプのようだが、僕は気になり出した頃にある場面を目撃したことで、一気に彼女に一目惚れしてしまった。

会社の裏手にある空き地。
そこには子猫や少し大きな大人の猫まで数匹の猫がいた。
どうやら社内でも数名いる猫好きが世話をしているらしい。
野良だが、人懐っこい猫達だ。
僕も時々息抜きに猫を見に行っている。

そこに行ったときに、猫に柔らかく微笑む莉ヶ花を見て、可愛さと綺麗さの同居しているその雰囲気に落ちたのだ。

しかし、多忙な仕事に忙殺される日々。
なかなか彼女と接点を持つことができずに一年が過ぎた。

坪内が今年に入り結婚した。
夏には子どもが生まれるとのことで、早く帰社できるように春から第二秘書をつけた。
少し私情を挟んだ人事だったが、表向きの理由もあり通った。