自室で勉強をしていると、突然机の上でスマホが鈍い音を立てて揺れた。
ディスプレイを見れば、美織からの着信で。
俺はシャーペンを置き、勉強用の眼鏡を外しながら電話に出た。
「もしもし?美織?」
『……もしもし』
スマホの向こうから聞こえてくる、今にも消えてしまいそうな力ないくぐもった声。
即座に、なにかあったに違いないと察する。
「どした?なんかあった?」
落ち着かせるように穏やかな口調で尋ねると、泣きそうな声が返ってきた。
『会いたい』
「え?」
『あなたがいなくなっちゃう怖い夢を見て……』
「美織……」
いなくなる夢、か……。
俺は時計に目を向けた。
もうすぐ0時。
「家にいるの?」
『……うん』
「わかった。
今行くから、美織は家ん中で待ってて」
俺は通話を切ると、コートを手に取り急いで家を出た。