暇だからと航のお家まで送ってくれると言ったりんちゃんさんは強引に私を車に乗せた。
『泣き顔のまま帰したくないし』と付け加えて。
「こうちゃん家ってN駅の交差点過ぎた辺りだったよね?」
「あ、はい。行ったことあるんですね」
「1回だけね〜。玄関までだけど」
何しに行ったんだろう。玄関まで。
りんちゃんさんと航にはそんなに接点があるようには見えないけどな。
まぁいいか。なんでも。
10分程車を走らせて到着した航のアパート。
早上がりって連絡するの忘れちゃったからビックリするかな。
「じゃ、また明日ねー!おつかれさま〜」
「送ってくれてありがとうございました。おつかれさまです」
りんちゃんさんにもたくさん迷惑かけちゃったな。
ため息をつきながらアパートの階段を登ってインターホンを押す。
ガチャ
「結?どうしたの?」
ドアから出てきた航のキョトンとした顔に安心感を抱く。
「……早上がりさせてもらって…」
「………そっか。お疲れさま」
私の泣き顔を見て察したのか、優しい優しい笑顔で家に入れてくれた。
「もう16時前だけど…お昼食べた?」
航の家は航の匂いがする。
大好きな匂い。
ってなんか変態みたい。
「そういえば食べてない」
お昼どころじゃなかったから。
「冷しゃぶうどん、作ったら食べる?」
「…食べる」
今朝も一緒にいたのに、すごく懐かしく感じるのはなんでなんだろう。
食べると言ったらすごく嬉しそうに笑ってくれて。
私まで嬉しくなる。
「結は座ってて」
「あ、でも、脳しんとう…」
「あのね、脳しんとうはすっごい軽かったんだって。寝不足であんなに寝てたみたい。間抜けだよね」
恥ずかしそうに、でも楽しそうに笑った航につられて私も笑ってしまった。
「だから座ってて」
お言葉に甘えてソファーに腰掛けてテレビを眺める。
あぁ、落ち着く。