「教えて欲しいことがあんだ」

「何?」

「あのさ」



切り出そうとしたとき、近くの公園からガキの笑い声が聞こえた。



緊迫した気持ちが一気に萎えた。

あー、俺学校サボってまで何やってるんでしょう?
そんな風に思って、一瞬口をつぐんだ。



「ちょっと!!」
「あー」
「忙しいっつってるでしょ!?」
「あ…ああ…あのさ」


俺は10分位かけて葵と出会ってからの様子を事細かに説明した。



一言も話さなかったこと。

エレベーターに乗るのを激しく嫌がったこと。

言葉を知らないこと、理解できないこと。



………そして、あの身体中の傷。

この件を話すとき、俺が葵にしたことを話さなくちゃいけなかった。




「最低」を10回。「人でなし」が5回。
終いには強姦魔とも言われた。



「申し訳ありません…」

今にも殴りかかろうかという勢いのさっちゃんに恐れを感じた俺は、ソファーの上で正座するハメになった。

「葵ちゃんに謝りなさいよ!!」
「もー謝ったよ!!」