【優亜サイド】


「先生、大丈夫なのかな……?」

「うーん、大丈夫ではなさそうだったなぁ~。完全におかしくなっちゃってたもん!独り言すごかったからカンナ大笑いしちゃった!」

おいしそうにドーナツを頬張るカンナとは対照的にあたしの気持ちはずっしりと重かった。

心なしか頭痛までしてきた。

「あっ、さっき気になったんだけどどうして先生に沢木さんの話をしたの?」

カンナはなぜかすべての原因が沢木さんであるかのように話していた。

「あぁ、あれ~?ちょっとカンナに考えがあってね~!綾香ちゃんのイジメ返しには若菜先生に頑張ってもらおうかなって思って!」

「そうなんだ?」

「うん!でもさぁ、若菜センセーもきっとこれで反省してくれるはずだよぉ。だって、センセーは悪いことしたからその報いを受けただけだもん。優亜ちゃんが心を痛める必要なんてこれっぽっちもないんだよ~?」

親指と人差し指でわずかな隙間をつくり微笑むカンナ。

「それにさ、カンナたちがしたことって言ったらセンセーの不倫の証拠を関先生の家のポストに入れたことと若菜センセーの下駄箱に入れただけでしょ~?あと校長先生に煙草を吸っているってチクったこと。火事はもとはと言えばセンセーの不注意だもん」

「それはそうだけど……こんなことして先生を傷付けていいのかな」

「だって、悪いのはセンセーだよぉ?カンナたちが教えてあげなかったら、センセーはずっと悪い先生のままだもん。優亜ちゃんがしていることは正しいことだから」

「正しいこと……?」

「そうだよ!今回のことで反省して若菜センセーはちゃーんっとクラスの子達をみてくれるようになるはずだもん。だから、気にしない気にしない~!」

あっけらかんとそう言われると、そうなのかなと思ってしまうから不思議だ。