「……え?」
目の前にそび目立つ、……城。
ここは、日本ですか……?
そう首を傾げるくらい、異次元すぎる瀟洒な邸宅に、わたしは開いた口が塞がらなかった。
簡潔に説明すると、
わたしは今、先輩の家に来ている。
* * * * *
放課後になると、先輩は当たり前のようにわたしを迎えに来た。
なんだか、それに慣れそうになっている自分が少し怖い。
「杏、帰ろ」
「……」
嫌だと言っても、抵抗するだけ無駄な気がする……。
逆らわないでおこうと折れたわたしは、とりあえず一刻も早く帰れるように努めることを決めた。
「杏、どこ行きたい?」
どこかへ行く前提で話を進める先輩に、吐きかけた溜息を飲み込んだ。