ーーー・・・・黒薔薇。



嵐が過ぎ去った、VIP室では微かに蓮華の鼻をすする音だけが響く。



「っ……ひっく……しくしく」


「蓮華、もう1個飴いる?」



誠名が、あやすように言えば静かに頷く蓮華。


正直、とてもめんどくさい。


だが、彼のお守りに付き合わされた三人にとって。


このことはもう恒例行事となっていた。



「零涙まだかな?鏡がないと……」



その時。


ガチャっ!!


金色のドアの取っ手が動き、重い扉が開く。



「はあはあっ……、はい。」



呼吸を乱した零涙が、入ってくる。


普段なら蓮華のためには行動しない零涙だが、愛する誠名のためならば即行動。


そんな零涙を見て、誠名は頭をわしゃわしゃと乱暴に撫でる。



「ありがと」


「うん……//」



誠名は、零涙から受け取った鏡を蓮華にかざす。


蓮華は、呆然と鏡を見つめていた。



「…………これって」


「蓮華の顔だよ、ほらよーく見てみな」



じっと鏡の向こうの自分を見る。



「……やっぱ、俺……カッコイイな」



蓮華は、自分の顔をまじまじ見た。


普段の三人なら、きもいだの、ナルシ野郎とか言うところだが。


三人は、お互いの顔を見て、喜んだ。


ようやく、蓮華が戻ってきた。


熱い友情を交わす中、蓮華は一人鏡の中の自分に寄っていた。



「あ、そうだ。ねえ、蓮華〜」



零涙は、ふと思い出したように蓮華の名を呼ぶ。


蓮華は、「なんだ?」と鏡を確認しながら答えた。


零涙はポケットから、端末を取り出すと蓮華に手渡す。



「何だ、これ?」


「自分から頼んどいて、何だはないでしょ」


蓮「あ、あれか。」



誠名と由弦の2人は、何が何だか分からずただ呆然と立ちつくしていた。


零涙は、端末の電源を入れる。


ノイズが少しはいり、鮮明に聞こえた声。


やたらと、聞き覚えがあるものだった。



「恋愛チャン達の声だ……」



まさか、これは……。


誠名は、ようやく謎を解く。



「盗聴器だ」



「犯罪だろォオ!!」



自信満々な、蓮華の声を遮るのは先程まで立ちつくしていた由弦と誠名。


確かに、金持ちだからと言って、これは犯罪だ。


だが、蓮華は「問題ない」と腕を組む。



「警視総監に、許可はとってる」


「そーゆー、問題じゃ……」


「人としてどうなの?って話」


「そんなもの、知らん」



そんな調子の蓮華を見て、誠名は無駄だと悟った。


蓮華は、昔から一度決めたことは譲らない。


まあ、仕方ないか……と、心に念じた。



「で、あいつらさ。」



容器から、棒付きキャンディをとって零涙は窓の縁に腰掛けた。


蓮華は、零涙の話に耳を傾けた。



「合コン、行くらしいよ。」


「ご、合コン!?」



蓮華の目の色が変わる。


が、そこで蓮華の中である疑問生じる。



「合コン、って……何だ?」



ズコッ。


周囲からそんな音が聞こえた。


確かに、彼らは金持ちのお坊ちゃま。


合コンなどという言葉を知る人は一人もー・・・。



「同じ人数の男女が、会って軽くデート?みたいな。
ほら、俺らで言う軽いお見合いみたいなもん。」



ー・・・いた。


流石は、プレイボーイというところか。


誠名の、言葉に蓮華の頭が混乱し出す。



「お見合い……?あいつらが?」



「急にどうした?」



蓮華は、深いため息をつきながら、そこら辺をうろつく。


そんな彼の奇行を見て。


誠名は、呆れたように蓮華の行動を見つめ。



「何あれ、とうとうイッちゃった?」


「もほかはへお(訳:もとからでしょ)」



零涙は、興味無さそうに誠名の言葉に平然と答えた。



三人は、困惑した。


蓮華は、何かを思いついたのか、急に立ち上がる。


今度は何……と、三人は蓮華を見つめた。



「俺も行く」


「いや無理でしょ」



すぐさま、零涙が批判。


「金ならあるぞ」と、どこかの悪徳業者のような台詞を言って蓮華は座る。


そんな蓮華の先程の奇行を見て、由弦は聞く。



「なぜ、あいつらに興味を持つ?」



「それは……俺って、ほら、モテるじゃん?」



「イラッ」



「女になんかフラレたことないし」



3「イライラッ」



「むしろ、寄ってき……「もうこいつ、殺していいですか!?」」



蓮華に飛びかかろうとした誠名の体を、零涙が抑える。



「何!?結局自慢か!!自慢かゴラァ!?」


「や、違う。ただ、あんな女、初めてなんだ」



その言葉に三人も、反応する。


確かに、今までとは違う女達。


騒いだりしないし、好かれることもない。



「俺も同じ。気になってるよ、あの子達」


「誠名が、そんなに言うんなら……」


「協力ぐらいなら……」



三人の言葉に、蓮華は笑顔になる。



「ありがと」



そう言って、蓮華は隣校舎の窓を見つめた。