──この日の朝は珍しく母親がいた


「おはよう、奈美。 ご飯が出来てるから食べちゃいなさい」


「……うん」


「お金、ここに置いておくからね。 食べたら、食器はシンクの中に入れておいてね」


「うん」


それだけの会話


けれど今日は違った


「……ごめんね。 この前の約束も守れなくて……次は絶対に埋め合わせするから!」


「わかったから、気を付けて」


「ありがとう、行ってくるわ! 可愛い娘のために頑張るわー!!」


わたしの額にキスをしてから仕事に出掛けた


一体あの忙しさでどこに元気が残ってんだか


でも、朝御飯は温かくて美味しい


「……ごちそうさま」


手を合わせてから、食器をシンクに片付けてからリビングの向かいの部屋の襖を開ける


「おはよう、お父さん」


角に設置された仏壇に座り声をかけた