2人はしばらくして降りた。
美佐とたまに来る洒落たショッピングモールの最寄駅で。

電車から降りる直前まで中川由香は俺をチラチラ見ていた。
目の前に彼氏いるってのに、ホント可愛いのに、変な子だ。



それからさらにしばらく乗り続け、ようやく目的の駅に着いたときには1時45分を過ぎていた。
35階を階段で降りたのがいい考えではなかったらしい。まあ最初からわかっていたことだけどさ。


葵を走らせようと急かしたけど、田舎道で砂利だらけ。
サンダルじゃあ、速くは走れない。

「葵、乗っかって」
「ん…?」
「背中に、くっつくの。わかるだろ?」

30秒ほどかけて「おんぶ」を理解させ、それで俺は葵を背負って走った。
葵は体温が高いらしく背中が暖かかった、というよりかはむしろ熱かった。


…やっぱガキだ。