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負傷者はすぐ医療室に運ばれたが、不思議なことに彼らの傷はそう深くなかった。

愛世も騒動の最中は肩から大量の血が流れていたが、宮廷医が診察する頃には傷も塞がりつつあった。

衰弱はしていたが愛世の意識はすぐに戻り、一番最初にアルファスが呼ばれた。

「巫女長の話では、皆の傷が早期に癒えるようギアスが守護神ドロスに加護を求めたらしい」

「…そう…よかった。じゃあ今頃はセロも大丈夫ね」

愛世がホッと息をつくと、アルファスは彼女のそばに歩み寄り、少し微笑んだ。

「お前は……大丈夫か?」

言いながら床に膝をつくと、愛世の身体に視線を落とす。

ドロス神の力で肩の傷は塞がれたものの、顔にも腕にも所々擦り傷や赤く腫れ上がった打撲が目立つ。

そんな痛々しい身体をものともせず、皆が無事だと分かるや否や幸せそうな顔をする愛世。

こいつは……こんな華奢な身体で悪鬼に立ち向かい、一国を救おうとしたのか。

祖国でも故郷でもない、このティオリーン帝国を。

アルファスは改めて愛世の勇気に胸が熱くなり、思わずかぶりを振った。

そんなアルファスの様子を不思議に思い、怪訝な顔で愛世が尋ねる。

「アルファス?どうしたの?」

アルファスは我にかえると黄金色の瞳を優しく細め、囁くように言った。