学校は冬休みに入り、俺は最悪のクリスマスの朝を迎えていた。


「なんだよ、コレ……」


 布団の上に何かが圧し掛かってきた衝撃で目を覚ました俺は、痛む額をさすりながらそれを退ける。

 襖だった。

 外れた襖に目をまるくしながら、本棚の中身が雪崩を起こす音に目をやる。

 サッカーボールが部屋の中を跳ねまわっている。

 いったい、何が起きたんだ?

 終業式の告白シーンが忘れられなくて、俺は眠れない夜を過ごしていた。

 明け方にようやく眠れた人間に対して、この仕打ちはないだろう。

 まだ三時間ぐらいしか寝てないのに……せっかくの冬休みぐらい、遅くまで寝かしといてくれよ。


「祐二、浩二! 家の中でサッカーしたのはどっちだ? 二人ともか!」


 サッカーボールを拾い上げて、外れた襖がはまっていた場所から隣の部屋を睨む。

 二段ベッドの陰から、同じ顔をした弟二人がこちらの様子をうかがっていた。


「だ、だって……サンタさんがくれたんだもん」


 身を縮ませながら、ボソリと声がする。


「だったら、なおさら大切にしろ! 取り上げるぞ!」


 というか、このサンタクロースからのプレゼントは、俺が弟たちの枕元に置いた物だった。

 クリスマスにはしゃいでなかなか寝付かない弟二人に両親はいつまでも待っていられないと、眠れない俺にプレゼントを託してさっさと寝た。

 俺は弟たちの部屋が静かになり寝入ったころを見計らって忍び込む。

 丑三つ時のことだ。

 サンタクロースからのプレゼントにはしゃぐ気持ちはわかるが、俺の安眠を妨害するとは。

 恩知らずもいいところだ。


「やだー! もう家の中で遊ばないから、返して!」


 二段ベッドの陰から飛び出してきた弟たちに、手が届かないようボールを頭上に掲げる。

 伸びてくる四本の腕に念を押す。


「本当に、もうしないな?」

「うん!」


 仲良く二人同時に頷いた。