* * *


 屋上で日向ぼっこをしていると、隣に立つ篠塚の頬を涙が伝っていた。

 彼女のためなら好きな人さえ殴れてしまう。

 それぐらい大好きで大切な女の子の頬を、涙が伝っていた。

 篠塚の涙を見るのは二回目だ。

 冷たい風にさらされて、雫がふるふると震える。

 日の光は雫を輝かせた。

 思わず見とれてしまうほど、綺麗な涙。


「やっぱり、私……女の子が好きなんだよ!」


 なんで泣いているのか、なんて声を掛けたらいいのか迷っていたら、篠塚は突然叫び走り出す。


「篠塚!? お、おい。危ないって……!」


 篠塚は一直線に屋上のフェンスに駆け寄ると、それにしがみつきよじ登りだす。

 キスしようと言われたときは篠塚の考えがわかるような気がした。

 でも今は……わからない。


「舞ー! やっぱり好きなんだよぉ!!」


 フェンスを半ばまで登り、そこにしがみついて叫ぶ。

 青い空に、茶色いグラウンドに向かって。

 ホームルームが始まる時刻で、学校は静まり返っていた。

 そこに、篠塚の告白が響く。

 篠塚の向かう方角に三笠は引っ越して行ったんだろうか。


「同性が好きで、なにが悪いんだ!!」


 涙が乾かないまま叫ぶ篠塚に思わず笑みがこぼた。

 俺もゆっくりとその隣に立ち、フェンスにしがみつく。


「青山ー! 好きだー!!」


 さすがに登りはしないが同じように叫んだ俺に、篠塚が驚いたように振り向く。

 ぱちくりと目をしばたたかせていたが、俺が笑いかけると篠塚もにっこりと笑う。

 そして二人、真っ直ぐに前を見つめた。