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 俺たちに近づいてくる、同じ中学の剣道部員達。

 その中に青山の姿を見つけてしまい、思わず自転車を止めてしまった。

 突然止まったせいで篠塚はバランスを崩したようで、自転車から飛ぶように降りた。

 並んで立つ俺たちに、水無瀬が気付いた。


「あっれぇ〜、稲葉と篠塚じゃん! こんなところでなにしてんだよぉ」


 学生服のポケットに手を突っ込みながらへらへらと笑い、仲間から一歩飛び出て俺たちに近づいてくる。

 俺も篠塚も気まずく黙り込み、俺はただ俯いているしかなかった。


「二人乗りなんかしちゃって……おまえら、付き合ってんだろ!」


 パチンとはじいた指で、俺たちのことを指差してくる。


「ダメだぜぇ〜。うちの学校、男女交際禁止なんだから、さ! 稲葉ちゃん」


 クラスメイトとはいえそこまでの親しさはない。

 それなのに馴れ馴れしく肩に腕を回してくることに、嫌悪感が走る。

 なにより、青山の目の前で俺と篠塚のことでからかってくることが許せなかった。