「『物理的存在』と『精神的非存在』?まぁた、訳の分からんことを…。」
 木工室で、憲治が技術部時代のことを話していた時だった。
 校舎の中を、二人きり連れだって歩く憲治と「少女」。どこに行っても、誰一人として他の人間と出会わないことを不思議に思った憲治が、「少女」にそのことを訊ねたのが事の始まりだった。
「つまりだ、他の場所から意識的に区切られた空間は、その中にヒトがいるか否かによって現実から切り放されてしまうんだァ。『無人の空間は別次元となりうる』っちゅうことだぁな。」