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…来てしまった。

ことりは陽の学校の前で立ち止まる。

「じゃあ、陽…また連絡する。」

「あ、うん。またね!」

柚希とは校門前で別れた。
ことりはどうすればいいかわからない為、その場から動かなかった。

(お兄ちゃんの変わりに学校に行くなんてやっぱり無理だし…こっそり帰ろう)

うん、そうしよう。

同じ高校の生徒の視線が自分に集まっていることに気づかないふりをして、ことりは来た道を戻ろうとした。

しかし、

「あ!陽じゃん!」

良く知った声が彼女の足を止める。

嫌な予感がする。

ことりがおそるおそる振り向けば、南が笑顔で手を振っていた。

あまりに大きな声で自分を呼ぶものだから、先程より視線が向けられる。

「え?あれってスカイの陽?」

「うわ〜!やっぱりかっこいい!」
「南くんもいる〜!」

キャー!と黄色い悲鳴があがる中、ことりは表情を歪めた。


これだけ騒がれれば、帰りにくい。

追い撃ちをかけるかのように南は陽に近づき、途中まで一緒に行こうと告げた。

…断れない。

ことりは力無くうなづいた。