「...よ、う、君...?」
ことりは羞恥で顔を真っ赤に染め上げ、勢いよくまくられている上着をばっと下におろした。
取れたウィッグから現れたのは綺麗な肩より長い髪。
何が起きたか状況が理解できない楓は、言葉を失った。
「おん、な?」
やっと出た言葉は、性別を確認するためのものだった。
ことりは泣きそうになりながら、小さくうなづく。
ああ、バレてしまった。木村に怒られてしまうかもしれない。
いや、その前に楓がほかのメンバーに言えばスカイとして、陽の代わりとして
活動することは許されないだろう。
「お兄ちゃん、持ってきたよ」
彩乃の声に、ことりと楓は硬直した。
「お兄ちゃん?」
「彩乃!今は入ってくんなよ!後は、僕がしておくから!」
リビングに入ろうとしていた彩乃の手から薬と冷却シートを受け取ると入って来るな、と釘をさす。
楓自身、今彩乃にバレれば今よりもっと面倒なことになると察したのだろう。
「ちょっと、お兄ちゃん!?」
「今着替えさせてんの!」
「え、あ...ご、ゴメン。ならあたし部屋に行ってるね!」
そして、遠ざかっていく彩乃の足音にほっとしたのか楓は息をはいた。
楓は、ことりにもう一度視線を戻す。
「...で、どういう事?」
どう説明すればいいんだろう、頭がぼうっとしてうまく考えられない。
全部話してしまえばいいのだろうか。
いや、陽が入院していると聞いたら楓はさらに混乱するかもしれない。
何も言葉を発しないことりを見ながら、冷却シートを彼女の額に
ぺたりと張る。
「全部、説明してもらうから。」
「...ごめん、なさい」
申し訳なさそうに歪めた表情。
熱のせいで色づいている彼女を見て、楓は無意識に胸が高鳴った。