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順調にいくかと思われたコスプレ喫茶。

問題が発生したのは、文化祭前日になってのことだった。

教室に実際の装飾を施しだした、その日。



「こんな所にいれねぇよ!!」

「今更そんなこと言ったってどうしようもないでしょ!!」



ある意味予想通り。

ピンクとキラキラとハートにまみれた教室を見るや否や、文句を言い出す男子達。

というわけで、勃発しました。

男子(一部)vs女子(一部)

やっぱ無難に黄色とか緑とか、そういうのにすればよかったのに。

なんて思うけど口にはしない。

低い声が地面を這い、高い声がキンキンと頭に響く最悪の環境の中、

私はと言えば黙々と望果と一緒に風船を壁に貼り付けてる。


喧嘩が始まって数分。

思ったより長いどころかヒートアップしてる喧嘩に、私は一応望果に話題を振った。



「望果、いいの?委員長がそんなんで。」

「あたしの責任じゃないしー。」

「いや、そういう問題じゃなくってさ・・・。」

「だって、あたし火に入る夏の虫にはなりたくないもーん。」

「望果ちゃん、今は秋の虫だよ。」

「あ、ともちゃん上手い!座布団一枚!!」



楽観的だなぁ、望果は。

ケラケラとともちゃんと笑い合ってる。

「なんで“夏”の虫なのか知ってるー?」という由来を語り出すなっちもきっと二人と同類。

私だって別に興味はないし、楽観的にもなりたいところだけど。

正直この騒ぎの中じゃ落ち着かない。

私は大きく息を付いて、ロッカーの上という高い位置から彼らを見下ろした。



「つーか誰だよ、これ買ってきた女子!!」

「荒川だろ?泣いてんじゃねーよ。」