「聡一さん、ラミカのことよろしくお願いします」
深々と母親に頭を下げられて、俺も下げた。
「俺の今の職業は世間に堂々と言えるもんじゃないけど。ラミカが卒業したら、きちんと職に就きます。だから安心して下さい」
「ええ、ラミカが選んだ人だもの。信用してるわ」
そして、ラミカも再婚相手の男に頭を下げていた。
「お母さんのこと、よろしくお願いします」
「もちろん幸せにするよ。近くに来たら遊びに来てね」
「はい」
たくさんのわだかまりが消えて、穏やかな波の音が耳を霞める。
ホテルを出発すると、車のバックミラーからいつまでも母親達が手をふっている姿が映っていた。
そしてラミカも――……
「泣いてる。寂しいか?」
「うん……でも永遠の別れじゃないもん。簡単に会える距離じゃないけど、いつかまた会える。だから少しだけさよなら」
17歳の女にこの選択はきつかったはず。
母親の幸せを想い、自分の気持ちを押し殺した。
「ラミカ、お前が俺を選んでくれたこと後悔させねぇから」
「ありがとう……大好き、聡ちゃん」
涙を拭ってやって、また強く手を繋いだ。そんな海旅行の帰り道だった。
第8話:終わり