今日は晴明はまじめに出仕するつもりらしい。

 きちんと髪を結い、こざっぱりした直衣を身につけていた。

 …美形はどんな格好でも似合うものだと感心してしまう。

 下ろし髪にゆるく着た狩衣姿も凄惨な色気を醸し出していたが、今はどこからどう見ても素敵に無敵な品行方正少年である。


「…どうかした?」

 じっと見ていることに気付いたか、晴明が首を傾げた。

「いや…今日は髪を結うんだなと思って」

 率直な感想を述べると、晴明は一瞬目を丸くし、それからふき出した。

「そりゃあ…仕事の時はちゃんとするよ。これでも官人だからね」

「髪をあげたところは初めて見たな」

「…あんまり好きじゃないんだ、あげるの」

 晴明が顔をしかめる。

「え…どうして。似合っているじゃないか」

「……耳」

「…みみ?」

 思わず鸚鵡返しにする。

 晴明は、無表情に繰り返した。

「耳の…形が変で」

 言われて目を向けると、確かにすこし尖っているようにも見える。

 あやかしめいた美貌に似合っているといえばいるが。

「ふうん?」

 特に気にはならないが、そんなものか、と思いながらりいは食事を続けた。


 朝餉を食べ終わると、晴明は早々に出仕してしまった。

 保名は先に出かけているし、りいは安倍邸にひとり残された。

 …暇である。

 何をしようか…と考えていると、何者かに軽く袖を引かれた。