「大体、んな薄着してこんな寒ぃとこ来るんじゃねぇよ。黙って着てろ。」


無造作に投げられた蒼刃の上着。
反抗しても無駄だから、あたしは大人しくそれを着た。


「…ありがと。」

「…。」


返事はない。でもそんなのももう慣れっこ。


「温かいなぁ…蒼刃の匂いがするし。」

「んだよそれ?」

「蒼刃にぎゅってしてもらってる時の感じがするんだ…蒼刃の上着を借りると…。
って蒼刃、下にそれしか着てなかったの?」

「あたりめぇだ。昼間、トレーニングしてたし。」


目の前の蒼刃はまだ春になったばかりだっていうのに、半袖のTシャツ姿。
見てるこっちが寒い…。


「あっ…あたし、自分の上着持ってくるっ!!
ちょっと待ってて。」

「いいって。俺は寒くな…。」

「きゃっ…。」





やばっ…落ちるっ…!!





そう思った瞬間、後ろから腕をぐいっと引かれ、温かい腕に包まれる。