――これが、ラストダンスになるのであろう。

溢れ返るような人の中、春樹は完璧に恵理夜を導いた。


「答えが解ったわ」


何時の間にか春樹の胸ポケットに刺された、紙のスミレを見ながら恵理夜は言った。


「……大した、問題ではなかったでしょう」


春樹は、穏やかな目で言った。


「貴方が欲しいものは、スミレ――英語で、」

「笑って、いただけますか」


春樹は、遮ってそう言った。


「笑って」


春樹の瞳に引き出されるように、恵理夜は微笑んだ。



花の咲くような、笑顔《Smile》――春樹の望むものだ。