「お嬢さん、」


青いドミノマスクをした男性が声を掛けてきた。


「よかったら一曲、ご一緒願えませんか?」


一応、叔父からワルツのステップの手ほどきは受けた。

だが、恵理夜は口元に微笑を浮かべて首を振った。


「ごめんなさい、庭園を見に行くところなんです」


恵理夜は、逃げるように庭園へ足を向けながら春樹の姿を探した。

また、別の女性に声を掛けられているのが見えた。

堪らない孤独を抱えたまま、恵理夜は庭園の方へ足を向けていた。