「あ、でもあたし普通の水着持ってないや」
さすがに水着は布地がないから作れないしな。
「スクール水着の上に、Tシャツとショートパンツを着て泳げばいっか」
「よくねーよ! バカ! 裸よりもエロいだろ。今すぐ水着買ってこい!」
怒られた。裸よりもエロい?そりゃ透けるけど下には水着を着てるんだから……
聡ちゃんの思考はよく分かんない。手渡された一万円札で買い物に出掛けた。
夏にしか着ない水着を買うのはもったいないよね。でも海に行くなら水着は必須アイテム……
安い水着を探して店を何軒もまわって、激安水着をゲットした。
少し露出多めの白のビキニ。だけど、安かったからいっか。
ついでに食料品も購入して帰った。アパートが見えてきた時、あたしの目の前を郵便バイクが走り去って行った。
「……お母さん」
まだ手紙は来ない。お父さんも消息不明だし。ため息をつきながらポストを開けると一通の封筒が入ってた。
「嘘……お母さん!?」
茶封筒には見覚えのある字であたしの名前が書いてあった。
お母さんの字だ!嬉しくて笑顔になったのも束の間……裏の差出人の名前を見た瞬間……目が見開くあたし。
「え……?」
――吉田陽子
……お母さんの姓が
変わっていた。