「んー…全くないって言ったらウソになっちゃうけど…。
でもねー蒼刃みたいに独占したいとは思ってないんだ。」

「どういうこと?」

「あのね、ボク…星来のことも大好きなんだけど、蒼刃のことも好きなんだ。
この旅でね…一番傷ついたのは蒼刃でしょ?
星来もいっぱい傷付いたかもしれないけど…でもやっぱりボクは蒼刃が一番傷ついたと思うんだ。」

「…うん。」

「一番守りたかった星来を守れなかった自分に絶望して、言いたかった気持ちも飲み込んで…挙句、星来には忘れられちゃって…。
しかも忘れられていたのは1度じゃない。蒼刃にとっては2度目だよ…。
ボクも星来に忘れられちゃった時は悲しかった。涙が出た。
でもね、蒼刃の痛みと比べたら…ボクの痛みはかすり傷みたいなものだったんだって思うんだ。」


緑志は優しく頷いてくれた。
ボクは言葉を続ける。


「だからね、記憶が戻った星来と想いが通じ合ったって分かった時は…ボク、すっごくすっごく嬉しかったんだ。
星来も…蒼刃も心の底から笑ってたから…。」



あの日の笑顔を、ボクは絶対に忘れないと思う。
そのくらい…嬉しかったから。

星来がにこにこしてたこともだけど、蒼刃が…いつもみたいにちょっと不貞腐れたように笑っていたことも。