ガレージに車を入れ、玄関に立つ。表の電灯は灯っていた。妻は起きているのだろう。

説明もせずに家を出たことを、責められるだろうか。「どこへ行ってたの?」と問われるだろうか。あるいは、まったく無視を決め込まれるか。はたまた、家の外にいる女の存在を疑われるだろうか。

想像が確定しないのは、妻の性格を知らないからではない。妻がどんな態度を取ろうが、私にとってなんの感慨も、問題も感じられないからだ。

冷めているのだろうか。妻に対して。

ならば彼女に対しては熱いのだろうか。それならばいい。だが、ひどく残念なのは、彼女を迎えに行った私が満たされてはいないことだ。体の接触がなかったからでも、迎えに行った彼女がなにかを思いつめていたせいでもない。

私は、彼女に無垢であることを欲望している。あくまでそれだけであり、彼女に対して熱を帯びているつもりはないのだ。

彼女は白い。汚れた手で舌で感情で、それに触れる。綺麗なものを穢してしまう罪悪感と高揚を綯い交ぜにした愛撫を経て興奮し、そのあとで改めて彼女を綺麗にする。

綺麗なものを汚くし、汚くなったものをまた綺麗にする。

染まってほしいままに染まってくれる、自分の色までもない白さに、私は惹かれているのだ。

ただそこに、愛情と、恋心はなく。私はただ、彼女の白さと自分の黒さを確認して、安心しているのだ。

それはそれ。これはこれ。

妻に対して白さを期待することはなく、彼女と同じような欲望を覚えることはない。

冷めているのだろうか。妻に対して?

違う。

彼女と妻の存在が、別格であるだけだ。