「…………早く起きねぇかな」




ちょうどてっぺんに昇った太陽が、既に30センチは積もっている雪を照らす。


帰りは俺のバイクで家まで送るんだし、さっそく春姫のご両親に挨拶するか…。


立場がどうこうなんて面倒事は、後でちゃんと考えてやる。


つーかもう、学校側にはバレてんじゃねぇか?





「ま、なにがあっても逃がしてやらねぇからな。覚悟しとけ」





瞼にキスをひとつ落とすと、タイミング良く春姫の瞳がゆっくりと開いた。


一言目はなんだ?


……ないとは思うが“わぁ、すごい雪!”とかじゃねぇだろうな…。




『…………え、うわ!すっごい雪!!』




まさか本当に、俺の危惧が当たるとは。


お前、春姫さぁ……ムードって言葉を知ってるか?


知らねぇよな、聞いた俺が悪かった。


…しょうがねぇなァ、俺が直々に教えてやるよ。




「はぁ……ほんと振り回すよな、お前」


『え、なにがですか?……あ、おはようございます。えっと…寝ちゃったんですかね、あたし。…そ!そういえば!結局、あたしのどこが好きなのか聞いてませんよね!?』






雪が溶ける頃には、彼女に伝わるだろうか。


銀色の世界にそっと隠した、最上級の愛情は。




「……さァな」









【了】