その場で踞るビキを王子は見下ろす。

「……お前は、一生私の血に纏わり付く運命だ。」

王子が、過去に繋がることは確かな事実で有るが、今のビキには渇望が率先して、考える気力も起こせない。
倒れたビキの掌を王子は爪先で踏みにじる。


「……お願いします、下さい……、貴方が欲しい。」

絶対的なる支配下に自尊心を捨て、ビキは掠れた咽の奥で懇願した。


「私を欲するのは、私が与え、生かしているからだ。このまま放れば、お前は死ぬが、それは死で、真の自由だろう。」

短剣で腕の内側を傷付け、王子の膚から濃厚な紅が香立つ。
滴り落ちる紅に目を奪われ、地面に這いつくばり、舌を伸ばしてビキは口に含む、あまりに惨めな姿の現実へ、王子の言葉を意図的に排除した。

死より辛いもの等、この世には無い。
そう繰り返して甘く淫靡な味に身を委ねた。