「綾実、何か変じゃね?」

春があたしの顔を覗き込む。

かすかに香る香水と、頬に触れた春の髪にドキドキする。

あたし、やっぱり春が好き。
こういう瞬間に自覚するんだ、付き合って何年経っても。



[春はあたしのこと好き?]

そんな言葉を言おうとしたとき、

「はーるぅ。英語わかんないー。今日当たるのに。」

と、春の取り巻きの女の子の甘え声が邪魔をする。


「あー…。」


行かないよね?
彼女の様子がおかしいのに、彼女をほっといて他の女の子のとこ行くわけないじゃない。


でも、春は、

「今行く。綾実、放課後待ってて。」

と言うと、その女の子のところに行ってしまった。

女の子が勝ち誇ったように、あたしを見る。