「急に言われても困ります。そろそろ寝ようと思ったところですし、明日にしていただけませんか?」

「申し訳ないのですが、大変お忙しいお方ですし、あまりお時間は掛からないと思いますので…」

言い方こそ丁寧なものの、黒崎さんの冷ややかな目は、『あんたに拒否権なんかないんだよ』と言っているようだった。

「分かりました。ちょっと待ってください」


私は髪を簡単に梳かし、ダウンのコートを羽織って外に出た。

私と話したい女性とは一体誰なんだろう…

黒崎さんに聞いてみようかと思ったけど、黒崎さんと話すのは嫌なのでやめた。どうせすぐに分かる事だし。

それが誰だとしても、良い話ではないだろうなと思った。