柔らかい陽の光が金糸の髪を照らす。気持ちの良いそよ風に金糸の髪はきらきらと煌めきながら揺れる。
花の香りが、庭園を、彼女を包んでいた。

「やあ、シンデレラ」

「ウィズさん!」

金糸とは反する、漆黒に染まった髪。人々から厭われる鮮やかな紅い瞳を見ても、彼女は恐れない。

「クロードは?」

「公務で出掛けています。たぶん、そろそろ帰ってくると思いますよ」

「そうか」

優しい笑みを浮かべるシンデレラ。その柔らかい笑顔に、何度救われたことだろう。

「クロードが王の座を譲り受けてから、もう二年経つのか」

穏やかな風が花びらを揺らす。
時が経つのは早いね――ぽつりと彼、魔法使いウィズは呟いた。

「クロードのおかげで、この国は変わった。庶民も奴隷も住みやすくなったと人々が嬉しそうに言っていたよ」

その言葉に、シンデレラも嬉しそうに微笑む。

「クロード様は本当に素晴らしい方です」

「……そうだね」

でもシンデレラ、君の方が、すごいんだよ。
かつて歪んでいた彼の心を、愛を恐れ、人々を嫌った彼を、君が救ったのだから。

「おやウィズ、来ていたのか」

その聞きなれた声に、シンデレラは満面の笑みを浮かべる。

「おかえりなさい、クロード様」

「ただいま、シンデレラ」

かつて冷酷だと言われていた彼、クロードが優しく微笑むのはもうおかしなことではない。
愛しそうに彼女の頭を撫でるその姿は、かつて歪んだ少年だったとは思えないほどだ。