その夜は告白をせず、部屋にも入らずに帰った。次からは部屋の中で待てるようにと、スペアキーを手渡されて。

その後も2〜3度香水の臭いがした事があったので、亮介さんに私以外の女がいる事は確かだと思う。

そもそも、運転手の黒崎さんが言っていたじゃない?
亮介さんは女遊びが激しいって…

それを都合よく忘れ、自分が亮介さんにとって特別なんだと思い込むなんて、私って馬鹿みたい。


「田舎に帰ろうかなあ…」

「急にどうしたんだい?」

「女優の夢も諦めちゃったし、これ以上こっちにいても、ろくな事がない気がするんです」

私はついマスターに愚痴をこぼしてしまった。

「小枝ちゃんがいなくなったら困るよ」

「大丈夫ですよ。今は就職難ですから、私の代わりはすぐに見つかりますよ」

「そうじゃなくて、私が困るんだよ。小枝ちゃんには、出来ればずっと傍にいてほしいんだ」