「ちょっと、亮介さん。私の家は右よ!」

「いいんだよ。送る気ないし」

「ど、どういう事?」

「つまり、今夜は帰してやらない」

亮介さんが意地悪そうにニッと笑うと、タクシーは交差点を左に曲がって行った。

そして、ほんの少し走った所で亮介さんはタクシーを停めさせた。


「此処は…?」

そこには茶色い壁の古そうな建物が建っていた。一応はマンションと書いてあるけど…

「俺んちさ」

「嘘でしょ!?」

とてもじゃないけど亮介さんみたいなお金持ちが住む所とは、私には到底思えなかった。

それと、亮介さんと私って、ご近所同士だったわけ?

「本当だって。さあ、行こう」

亮介さんは私の肩を抱き、そのマンションらしき建物の中に、私を連れ込もうとした。