そしてやっぱりこの男は、呆れかえったあたしの様子に、微塵も気づかないんだ。


「山田さん」

「…はい?」

「この店にほうれん草のプリンはありますか?」


…いや、ないだろ。

あったとしても余程の愛と勇気に溢れる、命をかけてほうれん草に恋い焦がれる強者しか食わねえだろ。


「山田さん」

「…何ですか?」


「…ほうれん草は、お好きですか。」


「…………」




いいんじゃないですか、ほうれん草。

鉄分もホラ、たっぷりですしね。





「…好きです」





ねぇ、今度あんたが来たときはさ。


カボチャも嫌いじゃないよって教えてあげようかな。





…ついでに、アンタも好きだって。