自宅に着き、大きく深呼吸をした。
記憶喪失のうえハネの病を患っている少女をひとり留守番させるのはいくらなんでも可哀想だったかと少しだけ反省し、玄関のドアを開けた。
「ただいま」
一声掛けると、奥の方から足音が近付いてくる音が聞こえる。
小走りで玄関まで迎えに着てくれたナキは、そのまま小さな体で僕に抱きついてきた。
「おかえりなさい」
綺麗な声が聞こえる。
伝わるぬくもりが心地良かった。
「「好き」」
ふたりの声が重なった。
いずれ滅び行く世界の上の小さな国で
ちっぽけな命の終わりを目前にしながら生きる
僕らの恋の始まりだった。