あの頃、幼く、私に懐いていた
エリスの受けた衝撃を思うと
心が痛む。

エリスだけじゃない・・・

両親のちょっと過剰な
心配性だって
私の身から出た錆・・・
なんだから・・・

かといって、
そこに縛られてばかりいるほど
・・・人間は弱くもなく、
感謝も・・・
薄れたりする・・・。

良し悪しは、別として。


有難いことに、ジェイドは、
涙をぬぐう様な興ざめな演出を
するような男ではない。

冷えた涙が頬を伝う温度で
私は、冷静さを取り戻した。

「俺もさ。
いっぱい描かされたよ。

心理学専攻の学生なんかが
来るんだよ。
ボランティアでさ。
ああゆう場所って。
何か、使う色なんかで
心理を探るらしいね。

俺は、嫌いだったよ。
そんなんで、量られるのって。

結局、大学に進んでも
そんなもんをかじることも
なかったけどさ・・・
これみてれば、わかるよな。」

それが証拠に、
この先のページに続く
教会や十字架、天使、祈り人。

最後のページは、暖かそうな
ランプのともる家屋の
イラストがあって。

どれも、宗教画のような
雰囲気で。

「エリスは、お前に
ただ、生きていて欲しいって
願ったんじゃないかな。
生きて幸せになって欲しいって
思ったんじゃねぇ?」

そういって、ジェイドは
口付けを施す。


昔の傷口にーーーーーー


熱くて
痺れて
溶けるような錯覚を

起こしたーーーー。