フッと軽く微笑んで、彼女の頭を撫でる。


「ごめんな樹里。10分で終わらせてくるから、先生にちゃんと手当してもらっとけ」

「渉……」

「先生お願いします」


もう一度撫でると、先生に一礼して保健室を出た。


その瞬間。


表情を険しいモノへと変える。


「……樹里に手ェ出すとは、それなりの覚悟してんだよな」


屋上へと続く階段を登りながら、制服のズボンのポケットに常備している黒い手甲を取り出す。


「さぁ……妖怪退治の始まりだ」


手甲をはめて、屋上に出る扉を開けた。


「どっからでも来いよ。ただし、10分しかねぇから」


クスッと笑って、風の中にまぎれてるヤツに告げる。






そして、一度だけ。


退魔調伏の呪文を唱えた───。