…だから、誰だよ、あんた。


不審そうな眼差しで相手を見つめていると、相手はあぁ、と思い出したように手をぽんと叩いた。

「俺、名前聞かれてたっけ」

そう言ってまた笑う相手に、幸姫は左頬をぴくりと引きつらせた。


…あぁ、この人は人の話を聞かないおばかなんだ。


すこぶる残念そうな眼差しを向けると、相手は首を傾げてきた。

「あー、なに、その顔は?ちょっとうっかりしてただけだって」

笑う相手に、幸姫は気を取り直して聞いた。

「私は幸姫。あなた、誰?」

自分も名乗っていないのは確かだと思い、まず自分の名前を言って、それから聞いた。

「…俺は佐助。幸姫様、あんたの母親、もしかして玲子か?」

真剣な表情で答える佐助。
佐助に聞かれて、幸姫は眉を顰めた。


…また、『レイコ』
どういうこと?
何でみんな、お母さんの事知ってるの?


その表情を見た佐助は、ふむ、と唸ると、さっきまでの真剣な表情をころっと変えてまた、それまでの少しおどけた表情でにまっと笑った。