「何処に行ってた」

小十郎が城の門をくぐった所で、不意に声を掛けられ、足を止めた。

「…屋敷へ戻っておりました」

声の主が誰なのか、顔を見なくても小十郎にはすぐに分かった。

「幸姫に昼餉の事を何も言っておりませんでしたので、様子を見に」

下手に嘘をつけばすぐにばれる。
そう思い、小十郎は小さく頭を下げながら当たり障りのない部分のみを素直に答えた。

「そうか」

短くそう答えると、政宗は城内へと向かって歩き出した。
それを見た小十郎は、少しだけ胸をなでおろす。

「今日も、お前の家に寄る。いいな」

「政宗様。本日は愛姫様の所へ伺うのでは」

「いいな?」

小十郎の言葉を遮るようにして、もう一度政宗が繰りかえす。

「…畏まりまして」

小十郎は、また、喜多に怒られることを覚悟しながら、頭を下げた。