なぜなら、達郎には変な癖があるからだ。

事件を推理する時、必ず缶コーヒーを手にする。

それが達郎の癖。

なんでもはじめて事件を解決した時、たまたま缶コーヒーを手にしていたとかで、それ以来の癖らしい。

そして事件を推理する達郎に邪魔が入らない様にすること。

それがお目付役のあたしの仕事だ。

やがて乾いた音がした。

達郎が缶コーヒーを開けた音だった。

一口飲んでから、達郎は言った。

「レミ、今すぐ女のアパートに戻れ」

「何かわかったの?」

あたしは身を乗り出したが、達郎は首を振った。

「今は言えない。でも、アパートを調べる必要はある」

「本当?」

「アパートは誰か見張ってくれてるのか?」

「星野警部補と越沼さんが付いてるはずよ」

「よし、行こう。でもその前に…」

達郎はあたしの膝を指差した。

「その半熟プリンを家に置いてかないと」