「デビューおめでとう」

ロッカーで着替えをしていた今田佳織は、その声に胸のリボンを結ぶ指を止めて振り返った。

「あぁ、淳子か」

「どう?初添乗の気分は?」
2つ隣のロッカーを開けながら淳子が尋ねた。

「うーん・・・寝不足」

「やっぱ眠れなかったの?」

「そりゃそうよ。ひとり立ちの舞台がなんてったって高校の修学旅行だもの。先が思いやられるよ」
すねたような顔をして佳織は言った。

 そんな佳織を見ていたずらっぽく淳子が笑う。

「何、言ってんのよ。異例のスピード出世じゃない。私なんてまだ先輩と一緒じゃないと乗れないんだからさ、贅沢よ、贅沢」

「まぁそうだけどさ・・・」